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入院24日目 伊藤整詩集 [健康]

 金曜日まで治療がないので、外泊許可を取った。

 治療がないのは、機器のメンテナンスのためだ。
 診察は、土・日も含め毎日あるのだが、午前中の診察で特に病状に変化がないので、外泊の許可が出た。ただし、一泊二日が原則で、翌日には戻らなくてはならない。年末・年始はどうするのだろう。家に戻らず(戻りたくとも戻れず)病院にとどまる患者さんももちろんいるので、外来は12月29日から1月3日までは休みだが、病棟では食事も出るし、看護師さんも当直の先生ももちろんいる。だからといって、この間も「一泊二日」は無いような気がするが。
 午後に病院を出て、家に帰り際、北12条の「弘南堂書店」に寄った。ここは、北8条の「南陽堂書店」と並ぶ札幌の老舗の古書店だ。(学生時代に、店主は兄弟だと聞いたことがあるが、今は代替わりしていることだろう。)日・祝日が休みなので、勤めてからはなかなか寄ることが出来なかった。
 店の外の棚の中に、田中克彦「ことばの差別」、矢野健太郎「新・数学むだばなし」があったので、それを取って店の中に入る。2点で250円だ。
 この書店は「北海道・アイヌ民族関係文献、古地図、日本近代文学書・自筆物」を標榜するだけあって、まさに中は「古書店」と呼ぶにふさわしいたたずまいだ。
 あれば手に入れたい本があった。「伊藤整詩集」だ。文庫本でも何でもいいのだが。
 伊藤整の詩に多田武彦が作曲した、組曲「雪明りの路」は50年ほど前に初演されて、男声合唱曲の定番となっている。わたしも学生時代に何度も何度も歌った。
 その多田武彦さんに、3年後の北大合唱団(男声)創立100周年記念のためOB会が委嘱作品をお願いし、出来たのが、伊藤整の「月夜にめぐり逢う」と、北原白秋の「緑の黎明」の2作品。
 その伊藤整の詩を読みたいと思ったが、家では見つからない。新潮文庫の「現代名詩選」(上・中・下巻)の中に14編が収録されているが、その中にはない。
 店に文庫本はあまり置いていないので、詩歌の棚を見るが見あたらない。せっかく来たのだから、ずっと棚を見て歩いて、もう一度近代文学の棚を見ると、縦に並んで背表紙を見せている本達の上に、黒い外箱の底だけ出ている本があった。引き出してみると、「伊藤整詩集」とあるではないか。箱から本を出すと本人のサインまであった。光文社出版、昭和29年11月5日印刷、11月10日発行とある。もちろん、「月夜にめぐり逢ふ」もあった。あとがきで、本人が「ここに集めたものは、私の全詩集と名づけていいものである」と書いてある。
 古書店での何という偶然だろう。会計の時に、「伊藤整さんの詩集を探していたのです。背表紙が見えなかったのですが、取り出したらまさにその本でした」と言うと「見つけてくださってありがとうございました」と店員さんが言った。
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